エイプリルフールでひゃあっ!
今日は4月1日。
研究室にはいつものコーヒーの香りが漂っている。
「今日はエイプリルフールだよ!いたずら仕放題じゃん!」
いつもに増してテンション高めエキスちゃんが両手を上げてくるりと回る。
「…いたずら仕放題ですね。」
データちゃんがコンソールをいじりながら淡々と言った。
「そーゆーこと!ラボ姉の様子を見にいこっか!」
「…賛成です。」
「あら〜、楽しそうですね〜♡」
ぷかぷか浮かびながらアール所長が点滅している。
「承認!承認!」
しばらくして。
「さて…最初はなにをしようかな…。」
エキスちゃんがラボちゃんのマグカップを手に取る。
「ふっふっふ。」
砂糖ではなく塩をひとさじ、そっとカップに入れ、元の位置に戻す。
「ラボ姉〜、ここにコーヒー置いといたよー!」
奥の部屋からラボちゃんが顔を出す。
「え、えっと…ありがとうございます…。」
ラボちゃんがカップに手を伸ばす。
口に入れると、
「ひゃあっ!…しょっぱい……です……。」
マグカップを持ったまま固まっている。
エキスちゃんが壁の向こうで口を押さえて肩を震わせている。
「よっしゃ!!」
「良いデータが取れました。今日はエキスにくっついていくとしましょう。」
データちゃんがポータブルコンソールを取り出す。
「あら〜、可愛いラボさんが見れるんですか〜?」
オブちゃんが手を合わせてにこにこしている。
「ラボ姉の『ひゃあ』もっと聞きたいし次いこー!」
——しばらくして
「ラボ姉、ちょっとこの部屋入ってみて?」
エキスちゃんが廊下の端の小部屋を指さす。
「…この部屋…ですか…?」
ラボちゃんがおそるおそる足を踏み入れる。
みんなは外の廊下カメラのモニタで様子を確認している。
「映ってる映ってる!!」
「…観察開始。」
「あら〜、いい表情をしてますね〜♡」
「今度はなんですか…?少し暗いですし…。」
ラボちゃんが壁をゆっくり確認しはじめる。
「…あれ…?」
部屋の中をぐるりと見回す。もう一周見回す。
「……ひゃあっ!この部屋ドアスイッチがないです!…どうやって出るんですか!!」
「最高!!」
エキスちゃんがガッツポーズをとっている。
「…有用なデータが取れました。」
「かわいいですね〜♡」
アール所長がオブちゃんの頭周辺を旋回している。
「ところでエキスさん、なんか金髪になっていませんか?」
オブちゃんがエキスちゃんの頭をじっと見ている。
「え!?マジで!」
エキスちゃんが近くのモニタに自分の顔を映す。
「…完全な金髪です。」
データちゃんが記録する。
エキスちゃんは一瞬固まった後、鏡の中の自分を見てにやりとする。
「ヤバくない?!マジイケてるんだけど!」
しばらくするとドアが開いた。
「…よ、よかったぁ……」
ラボちゃんは泣きそうになっている。
そこへまたまたエキスちゃんが。
「ラボ姉、これあげる!」
エキスちゃんが小さな丸い玉を差し出す。
「…エキスちゃん…だよね?…髪が……?…今度はなんですか…?」
ラボちゃんがエキスちゃんの金髪をまじまじと見ている。
「ただの煙玉だよね〜!!」
【ボフッ!】
あたり一面が白い煙に包まれる。
「ひゃあっ!」
煙の中でラボちゃんのシルエットが揺れている。
「なんかこれマジで楽しいんだけどー!?」
「あら〜、ラボさんどこかしら〜?」
オブちゃんが煙の中で手をかき分けている。
煙がゆっくりと薄れてくる。
データちゃんはコンソールを確認している。
「…ひゃあ。」
「…ラボ、どうしたんですか?」
「……だんだんと…ピンク色が…。」
エキスちゃんの髪にピンクのメッシュが広がりはじめている。
「えっ……。」
エキスちゃんが自分の前髪を引っ張る。ピンクだ。
「ガチで戻んないんだけど!!まあどうにかなるっしょ!!!」
開き直るのが早い。
煙がすっかり晴れた研究室。
アール所長がぷかぷか浮いてくる。
「今日もラボ姉の『ひゃあ』聞けて嬉しかったし〜!4回も聞けたし!!」
エキスちゃんがラボちゃんの肩に腕を回している。
「…ひゃあ4回、正確に記録しました。」
データちゃんがポータブルコンソールに目を向ける。
ひゃあの回数とともに波長など詳細なデータが映っている。
「すごくいい一日でしたね〜♡」
オブちゃんがにこにこしながらお茶を淹れている。
「……私はそんなに……ひゃあ…言ってません……。」
「4回です。」
データちゃんがポータブルコンソールをさらに近づける。
「ひゃ……。」
「5回目。記録しました。」
【ブオオオオーーーー】
アール所長の体がイルミネーションのように光っている。
エキスちゃんのピンクメッシュはまだ戻っていない。
「明日には戻るっしょ!たぶん!!」
「…たぶん、は不合理です。」
「あら〜、似合ってますよ〜♡」
研究室に笑い声が響く。
「ウチらのエイプリルフールは終わってないしー!!!」
「ひゃぁっ!!!」
「6回目ですね…どこまで伸びるか挑戦しましょう。」